2009/8/18 火曜日

  『無謀な挑戦』

Filed under: おしらせ — admin @ 15:16:57

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第49号 

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                                          『無謀な挑戦』 

                  学校長 荒木 孝洋 

 私学では、年に2回、夏休みを利用して教職員の全員研修を実施している。8月3日には教科別の研修会が学校や県内外の各種施設を利用して実施された。本校で開催した工業部会では、午前に熊本県産業技術センター所長柏木正弘さん(68才)を招聘して「産業技術と産業人材」の講演会を、午後には産業技術センター見学を行った。 講演の概要を紹介する。講師の柏木さんは、東京大学工学部卒業後、1965年に東芝に入社され、ICの研究・開発一筋、技術者トップの首席審議官を務められる等、IC(半導体)製造の世界では「世界を知るミスター半導体」と呼ばれている方である。業績が認められ、57才の時、世界最王手の半導体メーカー、アプライドマテリアル社に引き抜かれている。柏木さんはアメリカでの5年間が「人生観を変えた」と述懐された。帰国後、2007年から現職として熊本の産業育成に尽力されている。エネルギッシュで歯に衣着せぬ物言い。白髪に精悍な顔立ち。研究一筋という技術者の硬いイメージとはほど遠い感じの方でした。卓越した識見と体験に裏打ちされた講話にすっかり魅了された。講話の一部を紹介する。

◆「子どもたちがいい将来を送るために」と考えながらやるのが教師の仕事。技術者も同じ。「ものづくりを通して日本人がいい将来を送るために」と技術者は研究する。夢とも思えるような無謀な挑戦から新しい技術や人材が産まれる。

◆『ものづくりで生きる日本』は犯罪的標語だ。アメリカで5年間働いたが、テクノロジーカンパニー(技術系企業)なのに「受注・売り上げ・利益率」ばかりの世界。技術開発がメインの日本とは大きく異なる。「腕が上がれば幸せになれるという時代ではない。売る技術が問われている」と。材料を調達し、それを加工し利益を得る。つまり技術を媒介として人が糧(利益)を得るとき初めて「ものづくり」が意味をなす。日本は高い技術を持っているが、開発した技術が販売に結びついていない。半導体もとっくに中国や東南アジアにも追い越されている。日本人は売ることが下手だ。だから日本の産業が空洞化している。技術者も売るための愚直な努力と知恵が必要だ。

◆「食は人の世のすべての基盤」と言う思いから、熊本では食の流通を促す支援活動を行っている。地域の素材を地元の人が加工し販売するシステム、つまり、地産地消が地域活性化のキーワードだ。大企業や進出企業は自分の会社のことは考えるが地域のことを考えない。利益が出ないとすぐに撤退する。熊本の技術は悪くはないが、お互いの情報交換が不足し、風通しが悪く連携が弱い。「自分の物さえ売れればよい」では大企業と同じ発想になる。グローバルなこの世界、情報がなくて先手がとれなかったら技術が生きてこない。私は生産者と販売者と消費者すべての人に幸せをもたらすために、これらの人たちを繋ぐ役割を果たしたい。

◆熊本人は礼儀正しい。これは財産だ。「もっこす」と呼ばれているそうだが、独りよがりにならないようにして欲しい。お客さんや競争相手のことをいつも考えながら・・・。「働く場の創出・拡大」、「ビジネスの伸長」、「生き甲斐」が「幸せ」のキーワード。ものづくりも教育も人が幸せになるためにするものだ。

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