2009/10/23 金曜日

団塊世代の責務

Filed under: おしらせ — admin @ 8:50:40

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第53号
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               『団塊世代の責務』

                          学校長 荒木 孝洋 

 豊かな人間性を育むための教育は、幼少期の家庭や地域社会から始まり、学校を含めた社会全体でなされることが本来の姿である。しかし、昨今の日本を見ると、利便性との引き替えに人間関係が希薄化し、地域社会の教育力は大きく減退してきた。内閣府による国民生活に関する世論調査(2006年)での、「あなたの考えの中で、心の豊かさ、物の豊かさどちらが近いか」では、「心の豊かさ」を選んだ割合が、1972年では37.2%が、2006年では62.9%に及ぶ結果が出ている。また、内閣府「安全・安心に関する特別調査」(2004年)から、人間関係が困難になった原因の1位が人々のモラルの低下、2位が地域のつながりの希薄化で、それぞれ50%を超えているという結果が出ている。二つの統計から、人の関わり方をもっとうまくできるようになりたいという若者の気持ちに反比例して、時代の流れは、個人主義が浸透して、心貧しく、物質的には豊かな時代になっているのが現状といえよう。 

 しかし、「物より思い出」「物より心」を大切に感じている若者も、礼儀・作法・マナー・倫理・道徳を他人から教えられることは恥ずかしいと思ったり、面倒くさいと思ったりする傾向がある。勇気、忍耐、決断、自律、礼儀、感謝、友情、責任、共同・・・上げればきりがないが、心の育成には欠かせないことばかりだ。これから生徒たちが出会うであろう様々な場面を想定して、社会で通用する道徳的知識や規範意識、倫理観を持って行動できるように導くことは我々大人の責務だ。 

 例えば、礼儀について考えてみよう。礼儀という言葉自体に、若者は仰々しいとか堅苦しいイメージを抱いてしまう。また、できていないことを他人から指摘されたり、知らなかったことが他人に知れてしまうことを恥ずかしいと感じる人も少なくない。当たり前のことだが、礼儀とは相手に対する思いやりを、心を込めて表現することである。形式や表現方法は、土地や習慣によって違うこともあるし、場面によっても異なるだろう。大切なのは心である。福澤諭吉の言葉に「礼儀作法は敬愛に意を表す人間交際上の要具なれば、いやしくもこれをゆるがせにすべからず。ただその過不足なきを要するのみ」とあるように、礼儀とは、日常生活のどの場面でも、人間関係をより円滑にするための心の働きと作法である。

 本校では、「立ち止まって挨拶する」ことを指導指針としている。誰もがすぐに実践できる最も簡単な作法と考えるからだ。習慣になればすぐに実行できる。また、「知らないのに、知ったかぶりをしない」「素直に『はい』と言う」など、正しい作法はできなくても、正しい心の働きができるように導くことも大切である。その心があれば、言葉が出なくても表情や仕草が立派なあいさつになる。 

 団塊世代の我々は「頑張れば未来が開かれる」という目標があり、我慢とか忍耐もポジティブに捕えることができたが、今の若者にはその指針も拠り所も曖昧になっている。しかし、いつの時代も日本人が大事にしてきた礼節の心だけは失って欲しくない。少し先に生まれた我々団塊世代は全身全霊でもって、それを教える義務があると思う。

2009/10/14 水曜日

ハラゲイ

Filed under: おしらせ — admin @ 7:59:00

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第52号 

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                    『ハラゲイ』              

                    学校長   荒木 孝洋 

  ある著名な大学で文化論を担当している教授の話です。 「アメリカ人の書いた英語論文『日本人の義理とハラゲイは理解できない』を用いて講義を行った。学生に『ハラゲイとは何か』と質問したところ、学生は『お腹に絵を描いて踊る芸』とか『人形を動かしながらお腹から声を出して行う芸』と答えた。確かに『腹芸』には『腹に絵などを描いて演じる芸』と言う意味があるが、50名のクラスの半数以上がこの文脈を見ながら、その意味でしか『ハラゲイ』を説明できないことにショックを受けた。『君たちの解釈によれば、この論文は、日本人の義理が理解できないと同時に、なぜ日本人が腹に絵を描いて踊るのか理解できないと主張していることになるが。それだと不合理じゃない?』と、ここまで言うと、ようやく彼らは『ハラゲイ』に別の意味があるかもしれないと推察したのである。そんな馬鹿なと思われるかもしれないが、現代の大学生が抱えている問題は『知識』の有無より基本的な『論理』の捉え方にあるようだ。 年々素直になっていく大学生の表情は、まさに『腹芸』の世界から遠ざかっていくように映る。彼らの底抜けに明るい笑顔に、時折、一種の恐怖感すら覚える」と結んでおられます。 

 引用が長くなりましたが、笑って見過ごせない話ではないでしょうか。コンビニエンスストアの接客マニュアルに象徴されるように、今の世の中には『How to』が溢れ、これでもかこれでもかとも思えるようにマニュアルが出回っています。それだけ自分が考えなくてもよい時代になってきているわけですが、使われない脳は退化します。世の中を見渡すと、年金問題や環境問題などこれからの世の中で解決しなければならない難問が山積しています。『腹芸』は愉快な言葉ではありませんが、自ら考えることが求められていると考えたいものです。経験の少ない若者にとっては難題かもしれませんが、いつの世でも複雑な人間関係を有利に展開するだけの論理性と柔軟性は身につけてもらいたいと思っています。

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