2010/9/28 火曜日

彼岸と此岸

Filed under: おしらせ — admin @ 10:51:47

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第73号

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          『彼岸と此岸』  

                   学校長 荒木 孝洋

 20日は彼岸の入り、『暑さ寒さも彼岸まで』とはよく言ったものだ。朝夕の気温も20度を下回り随分と凌ぎやすくなった。季節は夏から秋へ。熊本では、藤崎宮例大祭のこの時期を随兵寒合(ずいようがんや)と呼び、馬追行事が終わると冬支度に入る。学校でも夏服から冬服への衣替え。猛暑の夏から開放され、やっと涼みの世界へ行けるかと思うだけで身体も心もホッとする。

 ところで、仏教の経典によると、彼岸は「悩みと迷いの此の岸(この世)から悟りの彼の岸(あの世)、つまり浄土の世界へ渡る『到彼岸』に由来するそうだ。最近は彼岸に墓参りする光景も少なくなったが、道辺には赤や白や黄色の彼岸花が満開だ。・・・先祖代々の墓の前で、夏バテ(人生バテ)のおばあちゃんが「そろそろ、私もそっちへ行くよ」と語りかけると、あの世のじいさまから「まだ早い。もっともっと悩みなさい」と笑い飛ばす・・・。年をとると、彼岸と此岸の距離が短くなるようで、そんな光景を夢想してしまう。 我々凡人には、とかく此岸(この世)は住みにくい。悩みと迷いの世界、しかも、経済不況と相俟って明日の予測すら難しい世情にストレスばかりが溜まってくる。

 先日、私の敬愛するT先生が「ストレスをためない生き方」について面白い本を紹介して下さった。免疫学者の安保徹さん(60才)の著書『“まじめ”をやめれば病気にならない・・・簡単!免疫生活術』という書籍だ。早速購入した。わずか200ページ余りの新書に、盛りだくさんの内容が書いてある。一部を紹介する。「現代人の万病の元はストレスだ。働き過ぎ、夜遅くまでパソコンのしすぎ、人間関係で悩みすぎ・・・飲み食いで解消するのも限界がある。真面目な人ほど病気になりやすい・・・。ストレスに晒されれば、交感神経が興奮し、体内の顆粒球が増加し、その反動でリンパ球が減り、リンパ球が担っている免疫力が低下する。つまり、長期間、仕事ばかりしたり、もめ事で悩んでいると、免疫力の低下が続き、とどのつまり、病気になる。しかし、ストレスがなくてボーとしていればよいかというと、今度は副交感神経ばかりが働いて、顆粒球の働きが低下し白血球が減り、元気が無くなり何もする気がしなくなる。免疫生活術の要諦は、‘きすぎない⊃べ過ぎないL觜垢ししないづ椶蠅垢たり感情を抑えすぎたりしないデ困澆垢ない心おおらかに人生を楽しむЯ宛きに笑みを絶やさない」ということだ。

 あんまり『まじめ』だとストレスがたまるので「まじめはほどほどに、でも、まじめは忘れないで」ということになる。要するにバランスの問題、つまり、「気持ちの切り替え」が大切だということだろう。いつも何かに追い立てられ、急かされて慌ただしく時を過ごしているうちに、人はともするとゆとりを失い、気持ちがいらついてくる。自分のことは棚に上げ他人にあたり散らす、あるいは自分の殻に閉じこもって悶々と過ごすことにもなりかねない。そんな日常の中で、時には自然の声に耳を傾け身を委ねてみたい。時間が静かに流れはじめ、自分を振り返る余裕や、物事を感動をもって受けとめるみずみずしい心が蘇ってくるはずだ。彼岸(あの世)は山の頂、眼下に見下ろす此岸(この世)のストレスは塵芥にしか見えないことだろう。豊穣の秋到来。時には彼岸の山頂から此岸を眺めながら、自分を見つめる静思の時間を持ちたいものだ。

2010/9/8 水曜日

三つ児の魂

Filed under: おしらせ — admin @ 10:11:13

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第72号

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            『“三つ児の魂”百までも・・・』

                       学校長 荒木 孝洋

 『“三つ児の魂”百までも・・・』と言われるように、平均80数年にも及ぶ人生の中で、その1割にも満たない人生初期の幼少期(1〜6才)の過ごし方が極めて重要であることは誰でも知っている。昔から、日本人は、褒めたり叱ったり、場合によっては叩きながら「ダメ」と言って躾をしてきた。しかも、“子育ては、親だけでなく地域ぐるみで”という素晴らしい習慣も醸成されていた。『他人を傷つけない、弱い者をいじめない、盗みをしない』は、日本だけでなく万国共通な躾の原点(掟)であり、幼少期には理屈抜きに教え込んでおく必要がある。

 ところが、最近の幼児に纏わる様々な事件や事象を見聞きしていると、その躾が危うくなっている気がする。幼少期に躾をされなかった子供が大人になると、とんでもないことが起こる。万引しても、「お金を払えばいいでしょう」と開き直る。イジメに気づいても、自分が被害者でなければ知らんぷり。本来、学校は《教育を行うところであって躾をする場所ではない》はずだが、高校生に対しても『挨拶や片付け、時間を守る、他人をいじめない』などの指導をしなくてはならない。

 一流企業でも、幼少期に叱られた経験がない新入社員を上司が叱ると、叱られた意味がわからずさっさと辞めるケースもあるそうで、上司は叱るのを躊躇することがあるそうだ。 そこで、躾の原点『幼少期の躾とは?』について整理してみた。

 【躾の基礎・基本】 

●食事・排便の躾(みんなと楽しく食事ができる)  ●自律の躾(片付けができる。時間になると就寝できる) ●物品管理の躾(物を大切に扱う、人の物を盗まない)  ●手伝いの躾(相手の指示を受け入れることができる)【少し高度な躾】 ●生活・遊びの躾(ルールやマナーを守る、友達と仲良く遊べる) ●危険を察知する躾(相手に危害を加えない。相手に接近したり離れたりできる)  ●あいさつの躾(「おはようございます」や「ありがとうございます」と言える) ●学習の躾(本を読む・画を描く・字を書く)【かなり高度な躾】  ●情操の躾(美しいものに感動し、他人をいたわる心) ●道徳の躾(善悪を判断する) 

 躾の中には、学習や情操・道徳のように学校で行う教育と重なる部分もあるが、幼少期にしっかりと躾がされていると、その後の教育的効果が数段に高まる。例えば、崇城大学芸術学部の先生の話だが、「最初は未熟な絵しか描けない学生でも、幼き頃の自然体験が豊富な学生は次第にいい作品を仕上げるようになる。また、片付けができる子は、挨拶もいいし友達にも優しく接する事ができる」と。

 ところで、もうひとつ気になることがある。子供を食い物にした教育産業の野放しだ。『0才からの英才教育』とか『今なら間に合うプロへの道〜3歳児のゴルフレッスン〜』等々、テレビ画面を通して垂れ流されているが、英才教育を受けた子供すべてがバイリンガルになったり、ゴルフの第2の石川遼君に成れるはずもないのに・・・。高度成長期を境に、物質的に豊かになった日本人は、欧米教育を「進歩的だ」と崇拝し、同じ感覚で、躾まで塾やレッスンに委ねる間違いを犯した(欧米の家庭での躾は日本よりはるかに厳しい)。幼少期に躾を外部に委ね、高校生になってから「手に負えなくなった。躾そこなった」と悔やみ、躾を学校でやり直すとなると、幼児期の数倍も手間暇がかかる。 英才は放って置いても育つ。普通の子を普通に育てるのが教育であり、その根底に横たわっているのが躾である。建物を支えるのが基礎ならば、人生を支える基礎が躾だ。その躾の責任者であり担い手は子供を生んだ親であり、きつくとも、忙しくとも、自らの手で泥まみれになりながらやらねばならぬ。そして、周りの大人達は『躾は社会全体で行う』といった社会環境を整える努力をせねばならぬ。営利優先の教育産業や子供に対する歪な誘惑を排除するための法的規制も、子供の成長支援優先であって欲しいし、国は教育に金を惜しんではならない。『日本の生き残り策は健全な若者育成しかない』と考えるからだ。

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