2011/4/13 水曜日

切ない

Filed under: おしらせ — admin @ 11:10:41

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第80号

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               『切ない』

                        学校長 荒木 孝洋

 春爛漫、今年の桜は例年より開花期間が長い。4月に咲きはじめた文徳寮の桜も最後の力を振り絞って白い花弁を保ってはいるが、沈痛な思いで新年度を迎えた。

 『大津波 いずこか地図に 確かむる みちのくの街 波襲いゆく』、我孫子市の青木正子さんの句だ。魔の3月11日、東日本に発生したマグニチュード9.0という未曾有の大地震によって、大津波が三陸沖を襲った。テレビ画面に映し出される凄惨な様子に声も出なくなった。放射能漏れなど史上まれに見る災害をもたらした東日本大震災は、いまだに死者・不明者を把握できないばかりか、わが国復興の図面を描くことができないほど絶望的ダメージを与えた。特に津波は海辺の町々を丸ごと飲み込み壊滅させてしまった。住居を失くし、家族を亡くし、仕事場を無くし、不自由で不安な避難生活を余儀なくされている方々の心中を思うと言葉が出ない。ただただ『切ない』。東北地方では新学期を迎えられない児童・生徒が一万五千人もいると聞く・・・。

 ところで、日本中が途方にくれている折も折、各種イベントが中止されるなど賛否両論ある中で選抜高校野球大会は開催された。被災された方々の苦悶の表情や痛々しい声がテレビで報道される中、出場する選手達の胸中も複雑であったろうが、開会式で、岡山県の創志舘高校のキャプテンは、被災者に思いを寄せながら次のような宣誓を述べた。

「私たちは16年前、阪神・淡路大震災の年に生まれました。今、東日本大震災で、多くの尊い命が奪われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです。被災地では、全ての方々が一丸となり、仲間と共に頑張っておられます。人は仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越えることができると信じています。私たちに、今、できること、それはこの大会を精一杯元気を出して戦うことです。『ガンバロウ!日本』。生かされている命に感謝し、全身全霊で、正々堂々とプレーすることを誓います」と。

 高く澄んだ声は、甲子園の銀傘に響きわたったばかりでなく全国津々浦々に送られた。若者らしい清々しいメッセージは、多くの国民に勇気と新たな希望を与えてくれた。また、被災者からも高校球児に温かいメッセージが送られていた。震災で自宅をなくした40才代の女性が被災地でインタビューを受けられた記事が熊日新聞に紹介されていた。「私たちは他人の幸せや喜びをねたむほど落ちぶれてはいません。皆さんどうぞ、我慢せずに楽しいときは笑い、嬉しいときは喜んで下さい。私たちも一日も早く皆さんに追いつきます」と。心優しいメッセージに感動し涙腺が緩んでしまった。溌剌としたフェアープレー、ガッツポーズもない、応援の鳴り物もない静かな大会は被災者への元気と希望のお裾分けだ。

 今回の震災を通して、改めて『命の尊厳』について考えさせられた。曹洞宗の大本山永平寺を開祖した道元禅師は、「人間は必ず死ぬ。本当の意味でそれを知っている人は強い。だから最後まで頑張れる」と言っている。被災後の日本人の粛々とした行動について、「忍耐・勇敢・冷静・秩序・献身」といった言葉で他国から高い評価を受けているが、日本人に、まだ武士道精神が残っている証かもしれない。『切ない』という言葉も武士道精神『惻隠の情』に裏打ちされた言葉だ。震災や津波で亡くなられた方へ哀悼の意を表するとともに、国民の一人としてしっかりと復興支援をしたいと思っている。「ガンバレ!日本」への私の応えは「ガンバロウ! 私も」としたい。

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