2012/2/13 月曜日

太平洋の浮草

Filed under: おしらせ — admin @ 9:08:19

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第94号        

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          『太平洋の浮き草』

                          学校長 荒木 孝洋

  暦の上では立春、「寒さで縮こまった身体を伸ばす準備をせよ」の知らせだ。ここ数日の寒波で梅の開花も遅れているが、「啓蟄(3月5日)」まで三寒四温を繰り返しながら、ユックリと春は訪れるのだろう。インフルエンザの流行もまだ治りそうにないが、少しずつ背筋を伸ばしていきたい。

 ところで、高校教育では「確率・統計」は教えるが「統計の見方」という科目はない。私の専門が数学だから気になるのかもしれないが、日本人は与えられたデータや処理された数値から安易に結論を導く傾向にあるようで気になる。同じ調査でも、サンプル数や調査対象、調査時期や地域、質問の仕方などさまざまな要因によって得られるデータは大きく変わる。だから、統計調査から結論を導く場合はよほど気をつけないととんでもないことになる。

 例えばこんな例がある。英国BBCが「世界に好影響を与えている国」という世論調査を主要二十数カ国で行った。それによると、アメリカ人で日本を高く評価する人は69%であり、逆に日本人でアメリカを高く評価する人は36%であるというデータがでたそうだ。権威ある世論調査だから、マスコミはこの数字から「日米の互いに相手を見る目には大きなギャップがある」と報道している。しかし、同時に実施された調査で、日本人が最も高く評価するのは自国で39%、アメリカ人が最も高く評価するのはカナダの82%、すなわち日米では回答の基準に数値上の大きな差があり、36%と69%の違いを同列に論じてはいけないのだ。後半の二つの数値も併せて判断すると、日本人の日米両国に対する評価はほとんど違わないのだから、「日本人はアメリカを高く評価している」となり、アメリカ人のカナダ・日本に対する評価の差を見ると「アメリカ人の日本に対する評価はさほど高くはない」という結論にさえなる。

 一般に、欧米の調査は「YES」か「NO」の二者択一式か、「YESに近い」「NOに近い」を加えた四者択一式が多く、国民も五択目の「どちらでもない」といった判断を避ける傾向(国民性)にある。今回のBBCの調査でも、日本を除くほぼ全ての国で65%から85%が自国を高く評価しているが、日本だけがたったの39%と自虐的なほど低い評価である。だからと言って「日本を嫌いか」と問われると、残りの61%が「YES」と答えるわけではない。実は、「YES」と「NO」を加えたものより「どちらとも言えない」に多く投票している。この現象は、日本人の「白黒決着を避けたがる国民性」、「控えめに語るをよしとする美感」によるものだと考えると納得できる。

  私は、新聞や雑誌、テレビの調査結果を見る瞬間、「さあ嘘が始まるぞ!」と身構える習性がある。本来、真実追究・真実報道がマスコミの責務だと思うが、最近の新聞やテレビを見ていると、世論を一定方向に誘導するための道具として世論調査を用いているのではないかと思えるケースも結構多い。調査対象や調査人数も明かさずに、数値だけを突出させて引用する手法はイカサマに近い。視聴者受けする過激で強引な手法は止めてもらいたい。TPP、原発、普天間、少子高齢化、年金・・・いずれも国民は判断を留保している(迷っている)。メディアによる詐術によって国民が正しい判断を奪われると、結論は真実からドンドン遠ざかり、苛立つ国民は「一刀両断の英雄」を渇望してしまう。英雄待望論にはナチス・ヒットラーの罠があることを忘れてはならない。マスコミ関係者も同じ日本人だ。国の浮沈に関わることには冷静な報道と対応をお願いしたい。でないと、日本は世界からほんろうされ、日本列島は太平洋の浮き島(孤島)となり、日本民族は世界を流浪することになる。

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