2012/7/27 金曜日

ガンバレ

Filed under: おしらせ — admin @ 8:22:54

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第100号    

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      『ガンバレ!日本の大人たち』

               学校長 荒木 孝洋

 間もなくロンドンオリンピックが始まる。熊本からも上村春樹団長をはじめ100メートルの江里口選手や柔道の緒方亜香里選手、バドミントンの末綱・前田ペアーなど10名の選手が出場する。金メダルを熊本へ」と意気込む。陰ながら郷土出身選手の活躍を祈っている。「ガンバレ!日本、ガンバレ!○○」と。

 ところで、昨年のことだが、「なでしこジャパン」が女子サッカーで世界一になり、日本中が大騒ぎになった。世界同時不況の真っ直中、暗いニュースばかり続く日本列島が久しぶりに歓喜の声で沸き返った。ところが、はじめのうちは気づかなかったが、選手達が口にする共通の言葉が気になってきた。「結果が全てですから」、「結果が出て、よかったと思います」、「精一杯努力すれば、結果が出る」等々、何事も結果につながらなければ、その価値が半減する、いや不毛に終わる、と言わんばかりの「結果」という言葉の連発である。しかも、指導者や解説者の口から出てくる言葉も、テレビや新聞の報道記事も同一歩調だ。一昔前はどうだったのだろうか?。私の記憶では、応援団の励ましにも選手達の決意にももう少しゆとりがあったような気がする。選手たちは「楽しくプレーしようと思います」、「自分らしくプレーをしたい」と発言し、応援団も敗れた選手に対し、「全力疾走に感動しました」といった類の言葉が多かった。もちろん、「考え方が甘い、だから、日本はオリンピックで勝てないんだ」といった叱責の声があったのも事実である。

 しかし、よくよく考えれば、「結果が出なければその行動にはそもそも価値がない」というのは、本来政治家が語る言葉である。残念ながら、昨今の政治家は自分の立場や利益ばかり主張し、日本の未来像について語る言葉はゼロに近い。政策より政局の思考停止の状態に見える。「決定」も「結果」も出せないようでは日本丸の行く先が心配である。加えて、政治家のスキャンダル報道に終始するマスコミの罪も重い。消費税やTPP参加問題、震災や原発事故の復興状況など、個別の課題についての冷静な分析や情報を知りたいのが国民の本当の願いなのだが・・・。

 本来、政治家や企業経営者に求められる「結果」というキーワードがいつの間にか若い世代のスポーツ選手たちの心構えを示す言葉として使われるようになってしまった。今回のオリンピック出場選手や監督からも似たような発言が続いている。女子バレーの監督は木村選手に「お前がつぶれたら終わりだ」とプレッシャーをかけ、レスリングの吉田選手は「3連覇を目指す」と公言し自らを奮い立たせている。大人たちが「結果」を出せないうちに、若者が「結果、結果」と連呼して、己の身体と心を鞭打っている日本は変である。「ガンバレ!日本」ではなく「ガンバレ!日本の大人たち」と言いたい。

 若者は時代変化に敏感である。子供の発する言葉は教育や世間の変化の写し鏡という一面がある。戦後のつめこみ教育からゆとり教育へ、そして再びゆとり教育からの離陸へ、といった教育や指導の変化に見られるように、子どもたちはいつも揺れ動く時代の大波をかぶっていることを、大人は憶えておきたい。今日の「結果重視」の風潮は、教育施策の変化によるものだけでなく、グローバルな経済界の「結果至上主義」も起因している。そのような社会的風圧が子供の健全な発育を蝕み、日本の未来に暗い影を落としていることは大人も気づいているはずだ。成長段階の子供に、展望を語らず結果だけ求めると歪な育ち方をする。教育は子供の夢を叶える作業である。甘いと言われるかも知れないが、私は、これからも、「やさしさ」とか「おもいやり」といった人間の根っこのところを大事にした教育を実践したい。

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