2012/10/15 月曜日

心の中で爆発する言葉

Filed under: おしらせ — admin @ 7:57:40

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第104号 

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        『心の中で爆発する言葉』

                   学校長  荒木孝洋

 台風や熱波とオサラバし、間もなく寒気の季節を迎える。暦の上では『寒露』、澄んだ秋空と爽やかな空気を満喫できるのももうしばらくのようだ。一方、秋冷の爽やかさは気候だけではない。不信と不満と不安が渦巻く日本列島に久しぶりに爽やかなニュースが舞い込んだ。京都大学山中伸弥教授のノーベル医学生理学賞受賞の快挙に日本国中が喝采の歓喜に湧いている。テレビや新聞では、連日、聡明な山中教授のコメントが報道されている。試行錯誤の研究活動に加えて、中学時代の「自由研究」の内容、家族の支えや周りのスタッフへの感謝の言葉、ビジョン(夢)とワークハード(勤勉)をキーワードにした精励の姿。誠実な人柄と謙虚な姿勢が相俟って、発せられる言葉のひとつひとつが聞いている者の心にじわーっと染みこみ、時間の経過と共に心の中で爆発する。 そして、山中教授は『iPS細胞の発見』という偉大な研究成果を出されたにも関わらず、「私は、まだ誰一人も患者を助けていない」と、実に謙虚である。また、筋ジストロフィーの患者から「治療の段階まで早く研究を進めて欲しい」と懇願されて、「この技術を待っている患者さんと我々では一日の持つ意味が違うことを、毎日、私自身にも研究員にも言い聞かせている」と話されている。完結した受賞の喜びよりも「iPS細胞の実用化を一日も早く実現したい」という次の目標(夢)実現へのミッション(使命感)がヒシヒシと伝わってくる。言行一致の真摯なコメントが我々の胸を打つ。

 ところで、清水幾多郎の名著『論文の書き方』に次の一節がある。「むやみに烈しい言葉を用いると、言葉が相手の心の内部へ入り込む前に爆発してしまう。言葉は相手の心の内部へ静かに入って、入ってから爆発を遂げた方がよいのである」。言葉は慎ましいものにかぎるという事だろう。自省しながら、この意味をかみしめている。こき下ろすのに力が入り、度を超す人を時々散見する。言葉は魔物だから、自ら言い募るほど自ら酔っぱらう。ゆえに言葉はますます尖って、盛大になるが、言っている当人の人望は下がるばかりだ。ネズミ花火ではなく、静かで確かな言葉を聞く耳を人はちゃんと持っている。丁々発止と口げんかの違いぐらいは子どもでもわかる。政治の世界もしかり、本来、国会は日本丸の針路を決める「言論の府」のはずだが、もっぱら駆け引きばかり、「口論の府」に見えてしまう。テレビの国会中継も質問者のパフォーマンス会場みたいで、「ヒステリック症候群」とでも称すべき態度であり、大袈裟な物言いや汚い言動で罵倒する場面が続く。震災で今なお不自由で不安な避難生活を余儀なくされている方が3万人近くいらっしゃるのに、そんな方々に、政治家はどんな政策とどんな言葉を返すのだろうか?。国民は皆、心に響き心の中で爆発する言葉を待っているのだ。 

 暗くて厳しい世相であっても、人々は生きるための夢と希望を欲しがっている。私たち教師の仕事は「子どもの夢を育み、それを叶えること」である。山中教授の言葉のように「心の中で爆発する言葉」を子どもたちに与えながら、若者の夢実現を支援したい。

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