2012/12/11 火曜日

本の読みどき

Filed under: おしらせ — admin @ 13:03:30

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第106号 

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          『本の読みどき』

                学校長 荒木 孝洋 

昨年5月に亡くなられた俳優の児玉清さんは、TV「アタックチャンス」の司会者でもあり、流麗にして熱烈な語り口は茶の間でも人気がありました。児玉さんは大の読書家で書斎にはうずたかく本が積まれていたそうです。著書も多く、最後の作品となった「すべては今日から」(新潮社)の中で、中学2年生の時読んだ徳田秋声の「縮図」に纏わるエピソードをコミカルに披露されています。「縮図」は児童書でもなく、中学生に向けて書かれた作品でもありませんが、ご自身を「自意識過剰少年」と称した児玉さんは、「縮図」のヒロイン銀子と同じ着物姿の女性を街で見かけると、「胸がときめいて仕方がなかった」と述懐されています。偶然に手に取った本が、思春期の児玉少年に大きな衝撃を与え、いわゆる「春の目覚め」なるものを実感されたのだろうと思います。 振り返ると、私もそれほど長く生きてきたわけではありませんが、それでも10代のころは特別な時期だったような気がします。高校生の時、教科書に載っている「方丈記」(鴨長明作)を読んでは、「無常」という言葉に「俺は何のために生きているのか?」と、真剣に悩んだものです。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例しなし。世の中にある人と、栖(すみか)とまたかくのごとし。・・・」今でも諳んじていますが、こんなはずじゃない自分、人にどう見られているか不安でたまらない自分、芽生えた自我に戸惑い、自分の気持ちを言語化できないもどかしさ、今なら笑って「よくあること」と思えることでも、その当時は切実に悩んだものです。

 児玉さんは、著書「すべては今日から」の中で、『もっと小説を読んで下さい。この国の未来を築くために』と、若者に最後のメッセージを遺されています。「読書を通してウイングを広げ、知性や感性を鍛えて知恵を絞り出せ!」という事なのでしょうか? 「知恵が出ないときは、本を読め、人と会え」とも言います。読書は未知との遭遇ですから、思わぬ出会いが待っています。ですが、「何を読んだら良いか」など悩む必要はありません。本が読者を選別してくれるからです。本は内容や言葉(漢字など)を通して、「まだこの本は早いですよ」とか「こんな本を読んで面白いの?」などと選別を促してくれます。

 ところで、思春期は人生の岐路を考える大切な時期ですが、心身とも不安定で周りの友人などに判断を左右されやすい年頃でもあります。そんな意味で、思春期は人生のピンチかもしれませんが、逆に、いい本に出会う絶好のチャンスでもあります。人は切羽詰まると、なりふり構わず道を見つけようとするから良い知恵が湧いてきます。特に、若いこの時期に出会う本は、一生を左右しかねないほどの貴重な財産となる可能性を秘めています。図書館にはガイダンス用として「高校生のための100冊の本」が用意してありますが、購読年齢は書いてありません。つまり、「本の読みどきとは、自分が読みたいと思った時」だと言うことなのです。いつでも、どこでも、自分と向き合う時間をくれるのが読書です。 

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