2014/6/10 火曜日

張り倒してでも教えたいこと

Filed under: おしらせ — admin @ 11:53:44

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文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第122号

           『張り倒してでも教えたいこと』
                            学校長 荒木 孝洋
 平成23年に、滋賀県大津市でいじめが原因と思われる中学二年生の自殺が発生した。原因究明の調査段階で関係機関の隠蔽体質が発覚し、翌年に「いじめ防止対策推進法(国の法律)」が制定された。本校でも国の指針に従い、「いじめ防止基本方針」を定め、岡本前教頭を委員長に任命し「いじめ防止委員会」を設置した。生徒への啓発活動や定期的な調査、職員の研修会、生徒からの相談活動への対応など、文徳からいじめを追放するという固い決意を固めている。
 ところで、「国家の品格」で有名な数学者であり作家でもある藤原正彦さんは、いじめについて、「いじめはなくなるはずはないが、初期の段階での教えが大切だ」と述べておられる。私も経験あることだが、昔もいじめはあったが、必ずある段階になると誰かが「もうそれぐらいでいいじゃないか。もうそのぐらいでやめとけ。それ以上やったら卑怯だぞ」と声をかけた。弱い者や女の子を虐めると軽蔑され遊んでもらえなかった。藤原さんはさらに続けて次のように述べておられる。「初期の段階で勇気ある子どもを育てないといけない。これは親の責任だ。6才ぐらいまでに徹底して卑怯というものを教えないといけない。子どもを張り倒してでも、力尽くでも教えることが重要だ。自分の子どもが幼稚園の年長にいる。年少の子供や女の子をぶん殴ったり、何人かで一人の子をやっつけたら、直ちに自分の子を張り倒せ。問答無用で何の説明も必要ない。殴られた子どもが『何かとてつもなく悪いことをしたらしい』と思えばそれで十分だ。これができない親は国賊だ。しかも、立派な大人になりたいという子どもの人権を侵害していることになる」と、昨今の甘やかし子育て風潮に警告を発しておられる。
 先日、孫を連れて玉名の小袋山に出かけた。孫の目的は公園にある100数十メートルのローラー式の滑り台である。滑るのは快適で爽快だが、出発点までの登りは勾配がきつく大変だ。子どもたちは楽しそうにスイスイと走りながら坂を駆け登っていくが、老体にはきつい。急勾配の坂道をハーハーと喘ぎながら登っていると、同じようなテンポで歩いている3人の男の子がいた。8才と5才と3才ぐらいの3人の兄弟であろう。泣きじゃくってしばしば立ち止まる3才の弟に対して、5才の兄貴が「早く歩かんか!」と怒っている。それを見た長男らしい8才の男の子が「○○も一生懸命歩いているんだから待っとかなんたい」と5才の弟をもの静かに窘めている。たったそれだけの光景である。多分、家庭でも日頃からそのような躾がなされているからだろうと推測しながら、見ている私まで幸せ気分になった。懸命に頑張っている3才の子を思いやり、無理強いする5才の子を叱責する、これこそが、いじめ撲滅のキーワードではないだろうか。
 熊本県では「くまもと家庭教育10箇条」という啓発標語を作成し、子育てのヒントとして各家庭に配布している。第3条には「教えよう、事の善し悪し、躾から」(善悪の区別)と書かれている。「やられたら、やっつけろ」ではいじめは解決しないし、報復の繰り返しでむしろ増幅していく。日本人はもともと素晴らしい情緒力を持った民族だから、もののあわれ、他人の不幸に対する敏感さ、弱者・敗者への涙、卑怯者を憎む心・・・他の国より優れた民族性を持っていると思う。いじめ防止のヒントもそこにある気がする。8才の子どもでも教えれば「卑怯者を憎む惻隠之情」を理解し実践できる。

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