2014/10/30 木曜日

めくる めくる 本の世界

Filed under: おしらせ — admin @ 14:58:43

     

文徳中学・高等学校のことをもっと知りたいと思っている小学生・中学生とその保護者の方々へ 第126号

 

          『 めくる めくる 本の世界 

                                            学校長 荒木 孝洋

 

 

 今日から読書週間が始まる(10月27日〜11月9日)。今年の標語は『めくる めくる 本の世界』。一生かけても読める本の数はほんのわずかだろうが、読書は知識を蓄え、感覚を磨き、考える力を養うだけでなく、視野を広げ想像力を鍛える。灯火親しむの候、読書を通して豊かな別世界を楽しむのも悪くはないだろう。

 

 ところが、若者の読書については気になることも多い。読書世論調査では、小中学校における『朝読書』推進が功を奏したのか小中学生の読書量はこの20年間、概して増加傾向にあるそうだが、残念ながら大学生では『まったく本を読まない』という学生が40%もいるという統計もある。また、スマホの普及で若者の雑誌離れや新聞離れが多いと聞くが、電子書籍での購読は増加傾向だそうだ。媒体がスマホであっても、読書量が増えることは歓迎すべきことだが、購読書が漫画や小説が多いと聞くとガッカリする。書籍の質については『?』。

 

 活字は文化のバロメーターと思っていたが、最近の雑誌や新聞などのメディアの発する言語には違和感を覚える。罵り言葉の氾濫である。「売国奴」「国賊」「やばい」「反中」「非国民」「○○は死ね」など・・・いずれも、不寛容でとげとげしく、殺伐としている。自由な言論や報道は民主主義社会の最重要基盤であるが、これらの言葉は禁断の罵声にしか聞こえない。学校では、荒っぽい言葉を使う生徒には「品格を失うなよ!」と指導するが、刺激の強い罵り言葉は、成長期の子どもにはインパクトが強すぎる。こんな状態がズーッと続くようだと子どもの育ちは歪んでしまう。メディアの役割は大きい。「罵り言葉の濫用は、瞬間的に購読者を増やしても社会の活性化にはいっこうに役立っていないし、日本国民としての自殺行為だ」ということをしっかりと認識して欲しい。

 

 一方、ネットの世界はもっとひどい。情報収集には便利だが限界や問題点も多い。吟味してない情報だから精度に不安が多いこと、見る分野が偏ること、いじめやトラブルの要因となること、長時間使用による視力低下、ネット依存症など・・・。あげればきりがないが、ネット世界での人権無視や罵り言葉が「いじめ」の大きな原因になっていることもある。罵詈雑言やヘイトスピーチが世間から批判を浴びる間はまだ大丈夫だが、「異常」が常態化し「普通」が特異視されることになるととんでもないことになる。歴史を紐解けば、普通のことが特異視される時代には、ろくなことが起きていない。戦前・戦中の日本などは典型例だ。寝言やコソコソ話で「戦争反対」と言っただけでも「非国民」と弾圧された。たかが言葉だが、罵り言葉の闊歩は予想以上に危機的な状況だと認識したい。

 

 振り返ると、農耕民族である日本人は、古来から美しい言葉を大事にしてきた。本校の校長室には、八代出身の衆議院議員だった故坂田道太氏の直筆による道元禅師の詩「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて冷しかりけり」の額が掲げてある。「あるがままが一番美しい」と解釈している。競争と抗争に明けくれる大陸の狩猟民族が不寛容な荒っぽい言葉使うのは理解できないでもないが、その欧米人でさえ日本文化を崇めている。道元禅師は次のような言葉も残している。「おのれの心に平和がないものが 国を平和に治めることができるだろうか」と。グローバル化が必然のこれからの時代、競争抗争だけでは外国とうまく付き合うことはできない。日本のよき伝統や言葉の品格を通した交流こそ外交の神髄と考える。中島みゆきの歌を思い出した。「めぐる めぐる 時代はめぐる・・・」と口ずさみながら、秋の夜長をゆったりとページをめくりたいものだ。

 

 

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