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2025 立秋

【女子ソフトテニス部】2025年8月17日

周りに火を灯す

 

 

立秋というにはあまりにも暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

約3ヶ月空いてしまいました。関係者の方からもかなりせっつかれました。僕自身の勝手な思いで申し訳ないのですが、書いてしまうと本当に終わりなんだと認めてしまうような気がして…。あの熱量を感じられるのはあの時のあの場所しかありません。むしろあれからほぼ毎日あの日のことを思い起こしています。とはいえ、新チームも走り出していますので、この辺りで備忘録として残しておきます。

 

 

このチームは、個々の能力がずば抜けて高いわけでもなければ、練習時間がかなり多いわけでもありません。選手としてもまだまだ甘い部分が多く、ここぞというときには引っ込み思案で安全志向。はっきり言って「練習上手」な部員が多いので、大会だけでなく練習試合ですら、ここ一番で力を発揮できず、同じような負け試合を何度も経験してきました。選手たちが自分の「殻」を破る日はいつなのかと、この日が迫ってくるにつれて、やってきたという自信の裏側に僕自身どうしても拭えない不安がありました。

 

個人戦の先行実施ではなんとか全ペア通過し、翌週に繋ぎました。そして、一息つく間もなく団体戦当日を迎えます。

 

5/30(金)。高校総体の総合開会式に合わせて、午後から団体戦の1回戦が実施されました。人吉高校相手に、結果としては②-1で勝利したものの、詰めの甘い部分が目立ちました。2番で出た吉元・原田は相手の大将ペアにファイナルで競り負け。3番の前村・松波は結果としては④-0だったものの相手に合わせてしまう試合運びに。

このチームはまだまだこんなものじゃない。試合が終わるとすぐに翌日の2回戦に向けて先輩たちを呼んで練習相手になってもらいました。平日の忙しい中に集まってもらってほんとに頭が上がりません。この恩は試合で返します。

 

 

ドローが発表されたときは思わず笑みがこぼれました。秋のリベンジができると。恐らく、部員も同じことを思ったのではないでしょうか。何のめぐり合わせか、2回戦の相手は秋の団体戦で惜敗した第3シードの尚絅高校です。それも秋と同じD5コート。景色は同じですが、勝ちに行く想いと自信はあのときとはまったく違います。去年この場所で蒔いた「種」がどんな花を咲かせるのか、彼女たちの集大成となる試合です。

 

うちのチームの強さは「爆発力」です。「チームのため」という想いが、彼女たちにとっては追い風になります。ただ、それでも今までは「あと1歩」が遠かった。その「あと1歩」を埋めるべく、ここまでやってきました。ドラマの主役は彼女たち自身です。

 

今回も事前に坂本と話をしてオーダーは決めていました。2面展開で実施され、1番に坂本・田村、2番に吉元・原田からスタートです。「後ろには頼もしい後輩たちがいるから、優衣のやりたいプレーで勢いつけて来い」とだけ伝えて。

 

2面展開でやるのが勿体無いと思うくらい面白い試合を見せてくれました。坂本・田村はG3-2のマッチを相手に凌がれてファイナル。少し遅れて吉元・原田がG2-3を粘って同じくファイナルへ。目の前の1球に込める想いが伝わってくる試合で、思わず僕自身もベンチから声が出ていました。

坂本・田村は5-2リード。坂本は秋とは違って持ち前のストロークを終始打ち続け、簡単に相手に攻めの一手を握らせませんでした。追われる側が受けてはいけませんが、相手も負けられない理由がある。気持ちのぶつかり合いです。徐々にその差が埋まっていき、最後はG3―④の逆転負け。「よくやった。勝負したやん。でもいま紫乃がやることは泣くことじゃなくて応援することやろ。」試合終了後、下を向いたまま顔を上げられなかった田村ですが、明らかにこの試合で殻を破って見せました。

方の吉元・原田は3-5ダウン。高校総体はまだここから何が起こるか分からない。それを知っているからこそ、この勝負に全力を注ぐ彼女たちの姿を一番近くで見れる僕は幸せ者です。

G3―④。

アップセットは起きませんでした。まだ足りなかった。

チームに勢いがあることは、チームが勝つための必要条件であって、十分条件ではありません。勢いだけでは乗り切れないのが高校総体。兆しはありましたが、簡単には届かせてくれませんでした。

試合が終わった瞬間、この1年間が一気に脳裏に呼び起され、何も考えられなくなったのを覚えています。この子たちが紡いできた1年間のドラマを結果としてのハッピーエンドで締めくくることはできませんでしたが、見ている人の記憶に残る試合をしてくれたことは間違いありません。チームの団結力も、戦い抜いた2ペアも最後まで神様に祈ることなく、自分たちの力で人の強さを見せてくれました。

 

 

落ち込んでる時間も束の間、個人戦が残っています。トーナメント1発勝負。その瞬間に心技体を「合わせる」こと。どれか1つ欠けてもいい結果は生まれません。その中でも「心」で勝負。その1点、その1球に泥臭くしがみつくプレーもあれば、お得意の(得意になられては困るんですが)ビビリを出して勝負に行かないプレーも。どちらかというとリードされて自分たちからテンションを下げていく「戦わない」試合になってしまいました。後から気づいても時すでに遅し。相手は待ってくれません。ここに懸けてるんですから。

 

 

 

 

唯一最終日に駒を進めた坂本・田村ですが、これまた自分に打ち克てずに終わるのかと思わざるを得ない試合でした。3回戦、4回戦と坂本は攻めのボールを打点を落として縦面で入れにいく、田村はとりあえず動くことで頭がいっぱいで、大事な場面で簡単に抜かれる。不安しか伝わって来ないプレーでした。3回戦ではファイナル逆マッチを握られ、相手のミスに助けられて辛勝。続く4回戦も、団体戦のときのような覇気はなく、声も出ない、意図のないプレーの連発。自滅の一歩を辿っていました。流石に見てられず、ファイナルに入る前のチェンジサイズで一言だけ言いました。

 

優衣、お前の3年間そんなもんじゃないだろ。しっかり振れよ。

 

最後は相手を突き放して、なんとか最終日に繋ぎました。G3-2から振れなくなった去年と重なりました。あのときもファイナルになって集中力を取り戻し、1-5から追いついたものの惜敗しましたが、今年はそこで勝ちにしがみつきました。

最終日、雨の降る中ベスト8決めが全面で一斉にスタートしました。相手は団体戦で敗けた尚絅高校の大将ペア。上に行くならここを超えない限り次はないと自分自身に言い聞かせていました。そして「テニス楽しんで来い」とだけ伝えて送りました。

これが坂本にとって人生最後になってもおかしくない試合です。本人もこの勝負は譲らないとばかりの面持ちでしたが、前日と明らかに違ったのは、笑顔が絶えませんでした。そしてそれは田村も同じだったようです。本当にドラマ制作に向いてるんじゃないかというほどの試合展開で、団体戦のときとは違い今度はG2-3から耐えてファイナル。勝ち負けのプレッシャーよりも、この場面でもテニスを楽しむことをプレーで見ている人たちに示してくれました。正直このまま試合がずっと続いて欲しかったと今でも思います。

 

G3―④。坂本最後の高校総体は最初と同じベスト16で自身のテニス人生に幕を閉じました。

試合後の2人の顔には悔しさというよりは、どこかすっきりとした表情を浮かべていました。面白かったです。

 

 

総体を終えて
 団体戦では新人戦で負けた学校と戦い、一番手という事もあって半年前に比べ弱気なメンタルもなく、正々堂々と戦うことができた。しかし、後輩たちの涙を見るとこんな先輩で申し訳なかったなとすごく感じる。同級生がいない状態で後輩たちには気を遣わせどんな時も一番近くで支えてもらった。私は恩返しをすることなく引退をしたことには悔いがある。ここまで付いてきてくれた後輩たちには自分達の代で笑顔で終わってほしいなと感じる。
 個人戦では一日目からハラハラする試合だった。去年はベスト16決めで負けていたので、去年の結果は越したいという気持ちがあった。全然ラケットが振れない中、後ろからの味方の応援で絶対に勝ちたいという気持ちが大きくなった。無事ベスト16が決まって、しのさんが涙したときには本当に重いプレッシャーを与えてしまっていたなと感じた。自分よりもしのさんの方が組んできた一年間すごくきつかったと思うし、大変な思いを沢山させてきたと思うけど、練習の時や試合の時、どんな時も上手くプレーができない自分に、いつも優しく声をかけてくれて励ましてくれて、テニス人生最後のペアがしのさんで良かったなとすごく実感した。九州大会やインターハイに出場できず沢山の応援に応えることはできなかったけど、自分自身として悔いのないテニス人生になった。
 今まで支えてくださった先生や先輩方、保護者の方や後輩達には感謝の気持ちでいっぱいです。同級生がいない状態で、沢山の方に気遣いや迷惑を沢山かけてしまっていたと思うけど、ここまでやってこれたのは皆さんの支えがあってからこそだと思うのですごく感謝しています。来年はもっと上を目指してこれからも頑張ってください。

 

 

終わりました。チーム坂本。

同級生がいない中たった1人で入部して、2年後、この子の代にはどうなっているんだろうと、正直不安しかありませんでした。今までのように1人でテニスをすることになるのかと。本人自身、表向きはあっけらかんとしてる人物なので、そんな大げさには捉えていなかったと思いますが、先輩たちが引退して自分の代になると、その気持ちにも変化がありました。

 

2年生の頃の秋の新人戦市予選。これが1つのターニングポイントだったように思います。(2024年11月4日のブログでさらっと話題にしてます。)初戦敗退。本人の中にも焦りと不安がありました。ただそれは、今思えば自分のためではなく、後輩たちのためであったんだとはっきり分かります。

後輩たちとの気持ちのすれ違いに気づいたまま臨んだ秋の団体戦は3番勝負で敗け。ハイジャパや選手権などの個人戦ではペアの田村のことを常に考えてプレーしていました。そして最後の高校総体。

坂本が何か頑張るときは決まって ”誰かのため” です。最後の中体連は前年の先輩たちのため、高1のときの新人戦は自分を選手に推してくれた先輩のため、そして高校総体は団体戦を後輩たちと一緒に戦いたい、応援してくれる人たちのために自分がプレーで返すことを目標としていました。そんな子です。

 

 

 

 

 

最後にもう1つ、坂本とのやりとりを紹介します。高2の3月のことでした。チームミーティングをしようとしたんですが、途中で打ち切りに。坂本に最後の総体の目標を聞いたときに帰ってきた言葉は

「ベスト16」

何を言い出すのかと思えば、勝負の場から降りるつもりでした。高校総体が終わるのが6月頭、インターハイは7月末。そこまでテニスを続ける余裕がない。それが本人の思いでした。

だとしても、だとしてもです。最後までやった結果届かないなら納得もいくかもしれない。ただ、やる前からそんな気持ちでそれが最後になるのはどうなの?いまその言葉を聞いて残り3ヶ月どういうモチベーションでチームを作るの?当然後輩たちも右に倣えでした。

そのあと坂本と2人で話をしました。

勉強がやばいっていうのは本当で、受験に力を入れないとって本気で考えてて。去年はまだ進路のこととかぼんやりだったし、本気でインターハイに行きたいって思ってました。でも、3年生になって勉強に焦りが出て、やらないとって思うけど、正直私は勉強もテニスもどっちも頑張れないから、高校総体が終わって完全に切り替えようと思ってます。でも、先生が私の試合を最後まで見たいって言ってくれるから、そこまではテニス頑張りたくて。

不器用な子ではあるので、なんとなくその気持ちは分かりました。本当はこのことを口にするのも嫌だったんだろうと思いますが、涙ながらに口を開いて勇気を出してくれました。とはいっても僕は、それで勝負を諦めることだけはして欲しくない。自分のテニス人生を締めくくるこの試合で、自分の中でも踏ん切りをつけて、残りの3か月間、後輩たちのために何かを残して欲しいと伝えました。

 

優衣の気持ちはよく分かった。でも勝負の場からは降ろさせない。優衣のいけるとこまでやって勝負には負けるな。九州総体、インターハイ、そこは後輩たちに託そう。せっかく1人でうちに入ってきてくれて、後輩たちも集まってここまでやってきたんだから最後まで戦う姿見せろ。

 

最後くらいは”自分のため”に、と思っていましたが、チーム競技である以上、彼女にとっては”誰かのため”が原動力になるんだなと。そうはいってもこれからやってくる受験は自分のためですからね。

本人自身、リーダーシップを発揮してチームを引っ張っていくような人柄じゃないですが、気づかないうちに、自分を中心に周りがどんどん明るくなっていきました。そして自分の火が消えそうになっても、そのときは周りの人が再び火を灯してくれました。常に周りに愛を注いでくれたからこそ、自分の周りに愛が溢れたんです。周りに火を灯してくれた人です。僕自身もすごく尊敬できる選手です。これからチームは離れますが、たとえ1人になったとしても独りではないってことを忘れないでください。

 

 

 

というようなことが裏側でありながら、最後の3ヶ月を駆け抜けました。そして最後のコートにはしっかりと花が咲きました。最後の最後まで水やりを続けた結果です。毎日少しずつ前に進み続けた結果です。これからの受験勉強にも十分に活きるはずです。何を拾って、何を捨てて、何を選んで歩くにしろ、悩んで迷って決めた選択が「これでよかった」と自信を持って言えるように新チームでもその意思を継いでいきます。

 

 

遅くなりましたが、旧チームは大変お世話になりました。新チームもまた新しいことにどんどんチャレンジしていきます。スポーツ選手として以前に1人の人間として、昨日とは違う今日を、昨日の自分よりも成長した今日の自分になれるように日々精進していきます。

 

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